2011年3月11日まで、ここにある写真たちは全て誰かの家にありました。
地震とそれに伴う津波は、家を、そしてその中にある多くのものを流していきました。
海辺の町は、一面ガレキだらけになったそうです。そこには車も服も冷蔵庫も、
写真やアルバムもそして人も、全部ごちゃ混ぜに泥だらけになって、
静かに横たわっていました。
それから少しして、生存者の捜索が終わりガレキの撤去が始まると、
自衛隊や消防署員や警察官や、町にいるいろんな人がその中から写真を拾いあげ、
別の場所に集めておくようになりました。
それは誰に頼まれたわけでもなく、
はっきりとした目的意識があったわけでもありませんでした。
ほとんど何もなくなってしまった場所で、戻るものが何もない場所で、
それでも何かを戻せたらと思ったのではないでしょうか。
集められた写真は体育館いっぱいになっていきました。
地震から2ヶ月近くが過ぎた頃、集められた写真たちを持ち主の手に戻そうという
「思い出サルベージ」プロジェクトが本格的に始まりました。
東京をはじめ日本の各地からボランティアが集まり、
集められた写真は少しずつ洗浄され、データ化されていきました。
写真の状態は様々でした。
比較的きれいなものから、バクテリアによる浸食が進み表面の像が
ほとんど溶けてしまったものまで。そしてここにある写真の多くは、
損傷が激しく持ち主の判別が難しいと判断されたものと、
運良く持ち主が見つかったものから貸してもらったものです。
3月11日までは、誰の家の引き出しにもあるような家族の、
仲間との思い出の写真だったはずです。
ぼくらは写真を撮ります。何枚かは大事にされ、
その他はあまり顧みられずに置いておかれます。
ぼくらは楽しい時、何かいいことがあった時、
誰かに見せたいものと出会った時写真を撮ります。
ここにある写真も同じでした。
一枚一枚その想いに大小はあれど、誰かが残しておきたいと思った場面でした。
この写真たちを前に何を思うべきなのか、答えは出ません。
見つかった写真を喜ぶべきか、もう持ち主の手に戻らない写真を悲しむべきなのか、
それともいなくなってしまった人たちのことか。
何か答えを出そうとするたびに、足りないものが出てくるような気がします。
それでも見つめることからしか何も見えてこないのだと思います。
3/10 に実行委員長・高橋宗正と副実行委員長・星和人によるトークイベントを行います。
twitter をきっかけに、何の縁もなかった山元町で写真を洗浄・複写を続けてきた高橋宗正。 被災し 生まれ育った山元町が津波にのまれた後に、仮設住宅支援や被災したいちご農家支援などを続ける星 和人。ここに展示されている写真がどのようにして洗浄され返却されてきたか、そしてこの活動を通して2人が見てきた被災地の現状をお話したいと思います。
会期:
3/10(土) 午後1時〜 午後5時〜
約45分のセッションを計2回行います。
会場:
Hiroshi Watanabe Studio(LA West Hollywood)
入場料無料。スナック販売あり。
【実行委員長 高橋宗正プロフィール】
80 年東京都生まれ。カメラマンとして様々な雑誌・書籍・広告を中心に活躍。02 年 「キヤノン写真 新世紀」優秀賞を写真ユニット SABA にて受賞。08 年「littlemoreBCCKS 第 1 回写真集公募展」リ トルモア賞受賞。10 年には写真集「スカイフィッシュ」を赤々舍から出版。東日本大震災後、日本社 会情報学会災害情報支援チームに参加。思い出サルベージの撮影隊長として活動し、現在は災害情報 支援チーム副代表。LOST & FOUND PROJECT を企画し、実行委員長として展示を進めている。
【副実行委員長 星和人プロフィール】
79年宮城県山元町生まれ。仙台の旅行会社・株式会社旅日記にて添乗員・営業として勤務する傍ら、 バリアフリーの促進を目的とした NPO ゆにふりみやぎ理事・事務局長としても活動。東日本大震災後 は、大きな被害を受けた山元町を復興するべく、写真返却・仮設住宅支援・被災した農家支援などを 主導して進めている。思い出サルベージを進めてきた日本社会情報学会災害情報支援チーム筆頭副代 表。LOST & FOUND PROJECT では副実行委員長を勤める。
展示会場や協力していただいているお店、そしてこのWebサイトでポスターを販売しています。
ポスターは3種類。それぞれ、一枚1,000円です。
売上の70%は義援金として山元町へ送られ、残りの30%はポスターの印刷代や運営費とさせていただきます。義援金などの詳細についてはDONATIONをご覧ください。
下記のお店でポスターを販売しています。
会場・協力店へお越しいただくことが難しい方は、こちらでポスターを通信販売致します。
販売の都合上、ネット販売では3枚セットのみの販売とさせていただいております。また、別途送料がかかりますのでご了承ください。
下記ボタンをクリックの上、ご購入ください。
日本国内へ発送のご注文
¥3,000 + 送料¥80
海外へ発送のご注文
¥3,000 + 送料¥500
「思い出サルベージアルバム」は、被災した写真を持ち主の手に返すために、
日本社会情報学会の若手研究者達が始めたプロジェクトです。
関わる人全てがボランティアで参加しています。
津波で傷ついた何十万枚という写真の泥を掃き、洗い、カメラで複写することで
データ化し、写真の持ち主に返そうとしています。
初めは大学関係者が中心で進めていたプロジェクトも、ツイッターやブログを通じて
カメラマンや写真の専門職、そして企業など様々な分野の人々が参加し、
全国からボランティアが集まる大規模な活動へと広がってゆきました。
[作業工程]
1.泥はきと洗浄
2.ナンバリング
3.カメラで複写してデータ化
4.インデックスファイルや検索システムを使って持ち主探し
今までに500人以上のボランティアが関わり、三ヶ月かけて作成されたデータを
活用してアルバム約1100冊バラ写真約19200枚が持ち主の手へと返っていきました。
2011年11月の現在、データ化した写真を元に、
より多くの持ち主を探す活動を続けています。
津波で流された写真やアルバムは体育館いっぱいにありました | アルバムはページに挟まった泥を払い、ぞうきんで拭きます | |
バラバラになって見つかった写真は水と筆などを使って洗います | 洗った写真は洗濯バサミを使って干します | |
洗浄が終わった写真やアルバムは全てナンバリングされていきます | デジタルカメラを使い複写することでページごとにデータ化していきます | |
データ化まで終わった写真は保管所に運ばれ持ち主が探しにくるのを待ちます | データは大学の授業やボランティアの手によって処理されます | |
処理されたデータはアーカイブ化されキーワードで検索できるようになります | いままで日本中から多くの人たちが集まってこの作業をやってきました | |
保管所には写真を探す方が日々訪れています | これまでに2割近い写真が持ち主に返却されました |
山元町は日本の宮城県にある町です。
名産は、りんご、いちご、ホッキ貝でした。
町の西は山地、東は海に面した低地になっていて、
田んぼや畑の広がるとても日本らしい風景をもった町でした。
地震による津波は町の面積の50%に浸水しました。
そして港も家も車も人も電車も多くのものを呑み込みました。
その被害は人口約16700人のうち死亡614人、行方不明4人、
そして建物の全壊2209棟、半壊1062棟、一部損壊1110棟です。
こうして文字にしてみると、それだけでは伝わらないことが多いとわかります。
数字からでは、友達や家族や仲間達がある日いなくなってしまって、
もう会うことはできない、冗談を言うこともありがとうを言うことも、
謝ることも何もできない、それがどんな気持ちなのかは
全く伝えることはできないのでしょう。
約1000ある仮設住宅では今も、帰る家を失ってしまった人たちが暮らしています。
「思い出サルベージアルバム」という写真洗浄のプロジェクトを今までやってきて気づいたことのひとつに、東日本大震災のように大きなことが起きた時、きっかけさえあれば快く手を貸してくれる人がぼくらが思っていた以上に数多くいた、というものがあります。
そして、そんな一つ一つの力によってガレキの中から拾い集められた写真たちが少しずつ持ち主の手に帰っていく姿を見てきました。
このLOST & FOUND PROJECTでは各地で展示を開催することによって、何か小さくてもできることがあればと思っている人と山元町とを繋げることができればと思っています。
ポスターを作ることにしたのは、少しずつでもお金を集めて山元町に送りたいんだと友達と話している時に「あんまり募金とかしたことないからどのくらい入れればいいのか分からない」という意見を聞いたからです。
それなら行動してもらうきっかけを作ろうと思い、作成することに決めました。
売り上げの70%を義援金に、残りの30%を印刷費とプロジェクトの運営費とすることで、できるだけ息の長いプロジェクトにしていきたいと思っています。また、ポスターの販売とは別に展示会場に置いておく募金箱に入れてもらったお金は全部義援金にしていきます。
集まった義援金は、地元のNPO法人ゆにふりみやぎを通すことで直接山元町の仮設住宅に届け自治会費として、また被害を受けた小学校の教材費として使っていただく予定です。
自治会とは山元町に8カ所ある仮設住宅にある町内会のようなもので、そこでの会合に出されるお茶やお茶菓子やこまごまとした経費は自治会長さんが自腹で出していることが多いと聞き、そういった額のお金ならばみんなで協力すれば集められるんじゃないかと思いここに送ることを目標として決めました。
また、被災してしまった小学校ではまだ教材が足りない状況が続いているということで、そちらにも寄付を送ります。
LOST & FOUND PROJECTは、東日本大震災で被災してしまった写真を見てもらうためにスタートしました。
テレビや新聞やwebは、それぞれの方法で地震と津波により起きたことの一部分を伝えてくれました。しかし当然ながらすべてを伝えることはできません。それぞれに得意な領域があり、こぼれ落ちていく情報があります。そのひとつが津波に襲われながら生き残り、またはいなくなってしまった人たちの声無き気配のようなものではないでしょうか。
この写真達を見ていると、否が応でもそこに思いを馳せることになります。そのことは今、そしてこれからも生きていく私たちにとっても大切なことであるはずです。
LOST & FOUND PROJECTは、宮城県亘理郡山元町にて被災写真の洗浄・返却活動等を行っている日本社会情報学会 災害情報支援チームと、現地で仮設住宅の支援活動等を行っているNPOゆにふりみやぎの有志により、実行委員会を結成して運営されています。
運営にあたっては、両団体と山元町役場、また様々な企業からのご協力を得ています。
山元町役場、思い出サルベージアルバムプロジェクト、日本社会情報学会、赤々舎、Photo Gallery International、trimdesign、もずや、NPO法人ゆにふりみやぎ、山ノ手写真製作所 (順不同)
お問い合わせは下記からお願いします。
info@lostandfound311.jp